学長日記
2007年1月30日
2007年を迎えて
新しい年を迎えてもう1ヶ月になります。今年は皆さんにとってどんな年になりつつあるでしょうか。私にとっては本学学長として迎える4回目の新年ですが、一層厳しい年の始まりでもあります。1月4日開催された合同の教授会で、恒例の新年の挨拶をいたしました。1月遅れになりますが、以下はその概容です。
われわれを取り巻く状況は極めて厳しい状況です。しかし、厳しいときにこそ原点に立ち返るというのが鉄則ではないかと考えます。昨年末、名誉総長が亡くなられましたが、彼の志を今日的な状況の中で受け継ぎ、さらに発展させていくことを改めて確認したいと思っています。彼の志とは、建学の精神の「教育は愛なり」であり、教育方針の「常に神と共に歩み社会に奉仕する」です。
昨年2月23日には、学園創立50周年を記念して同窓会の寄付による教育方針の石碑を設置しました。寒い日でしたが、そこには名誉総長もお見えでした。6月9日の記念祭典にもお見えになりましたが、親しく参加された大学最後の公式の行事だったのではないでしょうか。横山会長には、「同窓会にはいいことをしていただいてありがとう。」と改めてお礼申し上げました。今となっては、最後の行事としては最高のものではなかったかと思っています。
その教育方針のことですが、私たちは、教育改革18の特別委員会で、本学の教育方針(どちらかというと技術系大学としての理解が容易でない)を具体的にどのように教育の中で展開するか、名誉総長のお考えも付度しながら議論しました。そして、「社会・環境・倫理」という三つのキーワードが含まれていると理解し、それを教育の中に据えることとしました。
告別式の式次第のうらのページに、本学の教育方針に関連する出典ではないかということで、「正義を行い、慈しみを愛しへりくだって神と共に歩む」という旧約聖書ミカ書の言葉が記されていました。私のこの言葉を読んで、「社会・環境・倫理」は名誉総長の思いに近いものであることを改めて知らされました。「正義を行う」は「倫理」そのものです。「慈しみを愛し」は「人・社会」を大切にすることであり、「へりくだって」は人・社会に対してもそうでしょうが、名誉総長は他の場所で「自然の前にへりくだる」「自然を畏敬する」という表現をしております。それはまさに「環境」です。
私たちは、「社会・環境・倫理」という三つのキーワードを、本学の広い意味での技術者教育の中に据え、HIT教育を展開していくことにしました。三つのキーワードは、名誉総長の志であり、また21世紀の広い意味での技術系人材にあって大切な要素です。これまで培われた本学の学風の中で、これらを中心とした教育の展開は、本学ならではの特色ある教育となることでしょう。
新年の仕事初めの会で理事長から、「地域の活性化に貢献できる大学に」という訓示がありました。昨年、地域の人材育成について本学に大きな期待が寄せられていること感ずる機会がありました。それは、呉商工会議所が始めた奨学生制度のことです。その対象は、なんらかの形で呉市に根拠を持つ大学で学ぶ呉市出身の学生です。その意味では本学はその対象ではありませんが、卒業生の実績もあり、会頭のご判断で対象大学に加えて戴きました。しかも2名採用してもらいました。本学の人材育成に対する地域からの期待の大きさを改めて感じました。同時に、社会的使命を果たしていく責任を感じました。
本学はそういう大学であるということです。社会的使命を果たしている大学であるという自信と誇りを持ちたいと思います。ただ、社会の期待や付託に応える存在感のある大学であり続けるには、自らのあり方を周辺の動きの中で変えていくことが必要です。一昨年以来、「脱皮しない蛇は死ぬ」というマツダの井巻社長から伺った言葉を申し上げてきました(もともとはニーチェの言葉だそうです)。「脱皮」はこれまでの「態」をまったく変えることですから容易なことではありません。しかし、いよいよその感を強くしております。
脱皮は、名誉総長の志を今日的な状況の中で受け継ぎ発展せることと思っていますが、具体的に何なのか、皆さんとともに真剣に考えていきたいと思っています。
大学にとって、そして何よりもみなさんにとって、いい年になりますよう願って挨拶とさせていただきます。
投稿者 : 茂里 一紘
